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【舞台】極上文學 第14弾 「桜の森の満開の下」【12/08・マチネ】

今日はご縁あって、梅津くんの初日かつお誕生日当日の公演に行くことが出来ました。

書生シートでしたが、かなり見やすい場所で、しっかりと目に焼き付けてきました。

 

 

いつもどおり、ネタバレになることにも触れるのでご注意ください。

 

 

 

Twitterまとめ

 

 

作品について

公式

gekijooo.net

 

作品についてはここが一番わかり易いかと思いますが個人的にはスマボのほうがコメント端折ってなくて好きです。

natalie.mu

 

sumabo.jp

 

桜の森の満開の下・白痴 他12篇 (岩波文庫)

桜の森の満開の下・白痴 他12篇 (岩波文庫)

 

 

原作は坂口安吾の同名小説「桜の森の満開の下」。

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配役は原作と少し異なり、無名だったキャラクターたちに名前がついています。

原作と比べると

山賊=鼓毒丸(こどくまる)

女=ツミ夜姫(つみよひめ)

びっこの女=ミレン/アコガレ

です。

 

もちろんこの名前にも意味があって、孤独と罪と未練、そして憧れがテーマという。

この作品にそのテーマを見出したあたりから慧眼としか言いようがありませんが。

 

もちろんジャンル的には朗読劇を名乗っているので、台本は手に持ったまま、それすら小道具として使いながら、読み師(メインキャスト3人)と具現師(アンサンブルのような役)、そして語り師(今回は声優、ストーリーテラーかつ作家というキャラクター)によって演じられます。

 

そしてこの語り師が作家であるということで、彼のセリフの端々には坂口安吾の「堕落論」が登場します。

 

引用されている坂口安吾作品

今回の作品を見るにあたっては「桜の森の満開の下」だけを履修していればいいというわけでもなく、あらゆるところに坂口安吾のエッセンスと言うか、他作品の言葉、彼自身の考え方などが散りばめられています。

 

人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。

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  • 二十七歳 (劇中では名前など一部改変)

私は死亡通知の一枚のハガキを握つて、二三分間、一筋か二筋の涙といふものを、ながした。そのときはもう日本の負けることは明らかな時で、いづれ本土は戦場となり、私も死に、日本の男はあらまし死に、女だけが残つて、殺気立つた兵隊たちのオモチャになつて殺されたり可愛がられたりするのだらうと考へてゐたので、私は重荷を下したやうにホッとした気持があつた。
つまり私はそのときも尚、矢田津世子にはミレンがあつたが、矢田津世子も亦、さうであつたと思ふ。

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  • 三十歳

私はすでに二十の年から、最も屡々世を捨てることを考え、坊主になろうとし、そしてそのような生き方が不純なものであると悟って文学に志しても、私が近親を感じるものは落伍者の文学であり、私のアコガレの一つは落伍者であった。

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恋愛とはいかなるものか、私はよく知らない。そのいかなるものであるかを、一生の文学に探しつづけているようなものなのだから。

 

人生において、最も人を慰めるものは何か。苦しみ、悲しみ、せつなさ。さすれば、バカを怖れたもうな。苦しみ、悲しみ、切なさによって、いささか、みたされる時はあるだろう。それにすら、みたされぬ魂があるというのか。ああ、孤独。それをいいたもうなかれ。孤独は、人のふるさとだ。恋愛は、人生の花であります。いかに退屈であろうとも、この外に花はない。

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  • 理想の女 (最後の反復という言葉はあったような)

虚しい一つの運動であるか。死に至るまで、徒に虚しい反覆にすぎないのか。書き現したいといふこと、意慾と、そして、書きつゞけるといふ運動を、ともかく私は信じてゐるのだ。それが私のものであるといふことを。

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私はただ人間を愛す。私を愛す。私の愛するものを愛す。徹頭徹尾、愛す。そして、私は私自身を発見しなければならないように、私の愛するものを発見しなければならないので、私は堕ちつづけ、そして、私は書きつづけるであろう。

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  • 青春論
僕は全身全霊をかけて孤独を呪う。全身全霊をかけるが故に、又、孤独ほど僕を救い、僕を慰めてくれるものもないのである。この孤独は、あに独身者のみならんや。魂のあるところ、常に共にあるものは、ただ、孤独のみ。
魂の孤独を知れる者は幸福なるかな。そんなことがバイブルにでも書いてあったかな。書いてあったかも知れぬ。けれども、魂の孤独などは知らない方が幸福だと僕は思う。

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多分まだあるので次回ちゃんと覚えてこられたら。

とにかく作品リストたどっていけば見つかるはず。

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感想

本当にただ見てほしい、としか言えませんが、書かねばならぬことを書きつくすのみ、ということで。

 

まず舞台装置、セットが美しい。

撮影OKなので一応撮ったのですが、これが本番中は生きているかのように動くという凄さ。

画像

演者が客席近くまで迫る、限られた空間を存分に使った新宿FACEならではのパフォーマンス。

この距離で演じられるからこそ感じられる迫力や熱がありました。

 

今日のメインキャスト、読み師はこの三人。(敬称略)

  • 鼓毒丸…梅津瑞樹
  • ツミ夜姫…田渕法明
  • ミレン/アコガレ…山本誠大

そして語り師(声優)は榊原優希。

ヒプマイ声優になってしまいましたが「Readyyy!」プロジェクトから追ってたんだとかいう話をしておきます、マウンティングじゃなくて普通にずっと会いたかった人です。まあどっちみち推しです。

 

ちなみに私の推しは梅津くんです。本人に向かっては「さん」付なんですけど。

そんな彼の誕生日ということもあり、プレゼントボックスは溢れかえるわ当日券列は凄まじいわ物販も長蛇の列になるわと日曜日の昼間というのもありますがまあカオス。

誕生日関係なくメインキャスト3人全員が初日というのもあるかもしれません。

物販列に至っては7階にあるFACEから3階か4階くらいまで伸びてました。


具現師、いわゆるアンサンブル的な方たちのファンサというかお客さんへのアプローチが凄い。

ギターとハーモニカを操る具現師を筆頭にキャンディーズの「春一番」を歌うのが前説でした。

 

そして本編。

とにかく全てが美しい。
どの場面を切り取っても絵になる。
鼔毒丸の咆哮、ツミ夜姫の高笑い、ミレンの儚さ、切なさ。

鼓毒丸は一貫して男らしく、ツミ夜姫は魔性の女、ミレンはそんな二人の間に挟まれた立場で、おそらく普通の人間が共感できうるのはミレンかと思います。


クライマックスのある場面で、語り師が坂口安吾の別作品のセリフでつなぐところがあるのですが、そこでかぶさるミレンのセリフに泣かされました。


舞い落ちる桜やセットは生きているかのようで、具現師たちの芝居は人間のいわゆるモブから自然の物体、あるいは概念までなんでもござれ。
彼らがセットにもなるので、まさしくセットが生きた劇でした。

 

もう見終わる頃には目を見開いて震えてて、惹き込まれるとしか言いようのない、恐ろしい魔力。


全員の熱量が凄まじい、とにかく上手い。涙出るほど上手い。

あらゆる語彙を手放してしまうほどに良かったです。


朗読劇である以上、もちろん手元に台本があるのですが、それすら演出になっていました。

例えば本を閉じるとその人物の「死」あるいは退場を表していたり、向かい合ったキャストがそれぞれ相手に自分の台本を見せ合いながら向き合って話す芝居をしたり、本があるから出来ることが新鮮でした。

最後の捌けるところも本だけが残されていくのがなんともいえない良さがありました。

時折マイクに拾われる紙をめくる音もいいようもなく好きです。


シリアス一辺倒でもなく、鼔毒丸がツミ夜姫背負ってるところは小ボケ挟んだりと楽しくなっていたり。

あれは読み師より語り師の無茶振りなんですが「大きな岩を超えて、もっと大きな岩を超えて、もっともっと」と動きを大きくしろというフリが面白すぎました。

ぜえはあしながら頑張る鼓毒丸、なんだかんだいい男じゃないかと思ったり。

鼔毒丸めちゃめちゃハードですよ……。


そして一番懸念していた、というかどうするのか気になっていた首遊びのシーンを髑髏でやっていたのが演劇的で、文章の描くものからもう一歩想像させていて良かったです。

まあまさかあの耽美な世界にいきなり生首のグロいの出せませんし……。

 

そんな感じで基本的には緊張感漂うシリアスで耽美な作品でしたが、時折ユーモアもあって、そのバランスが限りなく原作通りというか、坂口安吾の世界観に沿ったもので良かったです。

 

カーテンコールでは梅津くんから誕生日コメントがありましたが、裏では「こういうの恥ずかしいしやらなくていい」などと言っていたようで。

それを田渕さんを筆頭に祝われて、みんなで拍手して、それだけでも鼓毒丸じゃなくて梅津くんとして照れまくってるのが可愛すぎました。

ずるいですよあんなギャップ萌え……無自覚なのがいいですね。

 

感想として足りるのかわかりませんが本当に素晴らしくて、いつぶりか演劇の凄さを体感できました。

 

オタクとしては梅津くんのお誕生日を祝えたことがひたすらありがたく、嬉しいことでした。

 

また次回、11日と12日も観劇させていただきますのでその際もまた書きます。

では。