Stellar Interlude

The show must go on!

【舞台】文ステ 黒の時代【感想】

このためにスケジュール調整をしてきたといっても過言ではない、文ステ見てきました。

今回はネタバレがあるのでご了承の上、お読みください。

一応前置き。

前作も横浜で観劇しています。 また、小説・アニメともにすべて履修しています。

登場する文豪たちの作品もある程度は読んでいます。

また、今回は座席が良く、前から3列目でした。前回は真ん中の後ろだったのでそれよりはかなり近いです。

その上での感想です。

 

 


 

導入はおなじみ(?)乱歩さんの楽しい注意事項コーナーから。

りょうきくんはやっぱりヘタミュで主演やってるだけあって安定感が違うというか、そもそもキャリアが長いので2つ上とは思えないほど貫禄があって好きですね……。

推しの話はさておき。

 

始まって舞台が明るくなって、岩のように見える壁(書割というかセットというか)が本のページの写真から作られたものだとわかった瞬間何かが弾けたような気がしました。

「ルパン」のシーンは登場人物たちがバーカウンターを向いて座るので、客席には背中しか見えないところもあったり、表情が見えないキャラクターの背中で伝えるという技術があってこその演出。

 

織田作之助「叫び」のシーンは物凄いです。ここが山場だと言われたらきっとそうかもしれません。

原作・アニメともに履修済みで展開がわかっていても、ぐっと喉の奥が痛くなって、気づいたら涙を流しているという、その前までの動きの少ないシーンが続いたあとだけに観客に与えるショックを最大にしているという印象。

全体を通しての印象。

客席のすすり泣き、笑い、咳払い、演者の息づかいがはっきり聞こえる静寂が支配するシリアスな緊張感に支配されたシーンと、戦闘が始まったとき独特の「手に汗握る」ほうの緊張感や大きな音がいいコントラストになっていて、劇場全体の空気ごと演出されていました。

前回から引き続き使われているプロジェクションマッピングはより進化して、さらに演劇にふさわしい控えめな使い方に変わっていて好印象。

町並みの表現、戦闘のシーンにおける特効としてなど、瞬間的な使い方がアクセントとして馴染んでいたのが良かったと思います。これは本の写真からつくられている大道具に映し出す形でした。

ストーリーの組み立ても、全体的に疾走感とメリハリある舞台として見やすいように、でも原作には忠実に作られていたのが良かったと思います。あえて休憩を挟まないことの意味を体感しました。

長さとしてはコンパクトにまとめていても、少人数の登場人物たちを繊細かつ濃密に、それぞれの関係性を抜かりなく描写しきっていたところは原作からの協力があることもあってか、原作ファン・アニメファン・舞台ファンのどの立場にも親切かつ納得いく、本当に素晴らしい脚本です。

私事ですが、座席が前列端で、目の前に太宰や乱歩さんをはじめ、首領やジイドといったメインキャラクターが何度も登場したのが生で見る意味を改めて感じさせてくれました。

圧倒的な存在感、役者さんたちの背の高さも衣装の着こなしも、息づかいも、何もかもが直接伝わってきて、確かに彼らは生きたキャラクターだということを感じられたので本当に神席だという一言に尽きます。 ほかに前の方でよかったこととしては、プロジェクションの没入感が桁違いに感じられること、織田作の煙草の煙、炎、そして香りがほんのりと漂ってきて、生々しくその存在、生死を感じられたこと……あげればきりがありません。

後ろから見る、またはライブビューイングで見る客観的な全体像もいいですが、やっぱり生の舞台は演者と近くにいたいと思うので、今回は本当に良かったです。特にプロジェクション・マッピングで好きだったのは文字が降ってくるのがいいなと。あれは前もあったような気がしますが、文ストらしい言葉・文字の生かし方が好きです。

ビジュアルもですが、作品全体から制作側はもちろん、演者さん個人個人のこだわり、ストイックなまでに作り込んできたキャラクター像が鮮烈で、ただの舞台化や2.5次元ではないな、という気迫すら感じています。

体格や見た目はもちろん、佇まい、表情、笑い方から泣き方まで本当にキャラクターと真摯に向き合ったからこそ生まれる、自然かつ強烈な個性の体現のおかげで、どんなに非日常な言葉でも、その台詞や激しいアクションから違和感や「つくりもの」感をいい意味でなくしていて、観客を引き込む力に圧倒されました。

本当に凄い、もの凄い作品です。

もっと素敵でわかりやすい言葉にすることが出来ないのが悔しいほどに。

一生の思い出、というかもう体験、経験のうちに入るものだと確信しています。

一生モノのエンターテイメント、いえ、もっと重厚でシリアスなものとして、「演劇」という表記が相応しい、素晴らしい作品に出会えたという幸せを噛みしめているところです。

文ストと接すると文章を書きたくなると言うのはいい効果の一つですね。

 

パンフしか買っていないのですが、本当に素晴らしいものなので、是非とも未履修のかたは原作も含めて興味を持って貰えたらなと思います。

 

ちなみに今回も劇伴にはアニメの曲もあり、サントラもありだったのでそれも少し気にして聴いてみてください。

 

いつかルパンに行くよ、という約束もして。